肉まんと鍋そば。

食べ歩き ,

「肉まん」。頭にこの文字が浮かぶと、僕はまっしぐらに銀座を目指す。

目指すは「維新號本店」である。なにしろここの肉まんは、でっぷりと太っているのがいい。

肉まんの味は、手に重さと温かさを感じた時から始まると考えているので、この大きさは、とても嬉しい。

もっちりとした皮は厚く、包容力があって、むむむっと頬張れば、香ばしさが鼻に抜けて、うららかな気分になる。

干し貝柱の旨味を抱き込んだ肉汁も滋味が柔らかく、肉と野菜の調和がとれた味わいが、甘く舌に馴染んでいく。最初は何もつけずに食べ、次に酢、続いて辛子を溶いた酢につけて食べるのが好きである。

もうこの一個だけで幸せになって、十二分に満足するのだが、つい追加して頼んでしまうのが、「鍋そば」である。

丸い滋味に満ちたスープに、イカやエビ、牛肉に筍、金針菜に袋茸、クワイに干豆腐など15種ほどの具が入っていて、柔々に煮込まれた麺と、様々な食感の具を食べ進むのが楽しい。

たまに僕は、酒を頼み、上の具を肴にして飲んで、最後に麺を食べて締める。お腹に余裕があれば、残ったスープに白ご飯をぶち込んでもうまい。

いずれも戦後の物資不足時に、美味しいものを出そうと、店を始めた心根が詰まった味である。