だから僕は恋をする。

食べ歩き ,

てれんとウニが舌に甘えると、わさびの刺激が一瞬輝き、その後から海苔の香りが広がった。
そして最後に、ウニと海苔の甘みが抱き合い、共鳴し、同化して、官能となる。
まるで上質のウニの軍艦巻きを食べた時のような、ドラマだった。
「chenci」の夏のパスタである。
脱水して甘みを膨らました塩水ウニは、身を柔らかくして、パスタと丸く馴染む。
ゲタに詰められたウニを使った時に感じる、ウニはウニ、パスタはパスタという無理が、一切ない。
そして海苔は十六島海苔を使う。
高級だからではない。
普通の海苔より香りは弱いので、ウニの邪魔をしないが、甘みと旨味は濃いので、ウニとともに高みに登ることができる。
ワサビは葉ワサビを使う。
しかしそのままでは浮いてしまう。
鮎魚醤と米麹を合わせ、60度で2日間発行を促した調味料を使い、葉ワサビと合わせて使うことによって、刺激と香り、塩味が丸みを帯びて、突出することなく、ウニの甘みをほんのり引き締める役目を果たす。
理をはかる。
坂本シェフの料理には、いつも料理にとって一番大切なものが、さりげなく潜んでいる。
だから僕は、強烈に惹かれる。
恋をしてしまう。