六月。「鮎正」には、夏の到来とともに島根県の高津川から、毎日よりすぐった鮎が届けられる。天然鮎は、壊されつつある日本の自然をいただく、希少な体験となりつつある。
初回なら、一番安いコースを試してみてはいかがか。前菜、白味噌のお椀、背ごし、塩焼き、白子と真子を一年漬け込んだ子うるか、素揚げ、鮎ご飯と鮎づくしが続くが、やはり主役は、塩焼きと素揚げ。二匹供される塩焼きは、皮はパリッと身はふんわりと仕上げ、頭も骨もしっかりと火が通った絶妙の焼き加減。頭から齧り付けば、淡い苔香や川の水、風など、川面の匂いが蘇る。ワタも苦味の中にほの甘さを秘めた上等の味。一方素揚げはより香りが立ち、鮎の命である魅力を実感する。 追加するなら、うるかと赤味噌を合わせて茄子と炒めたうるか茄子を。また秋には限定ながら、茜色に焼き揚げた、子持ち鮎の燻し焼きも用意される。
鮎 正
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