浜松町「ホルモン坐市」

食べ歩き ,

浜松町「ホルモン坐市」は焼き台がいい。
ジンギスカン鍋のような中央が盛り上がった形で、鉄板にスリットが入っているので、ホルモンを焼くのに理想的である。
なにしろ面で焼けるのがうれしいのである。
もちろんサシの入ったサーロインにもいい。
赤身と白(ホルモン)を1:3の割合でごちゃまぜにして、甘辛い味噌ダレで和えた名物ごちゃ混ぜ焼きも、俄然やる気が出ちゃう。
今日のは、赤センマイ、ハラミ、ホソ、シマチョウというスターたち。
スターたちを迎え撃つ飲み物は、なんにしよう。
店員は「ジントニ」がオススメだという。
いわゆるジントニックに黒胡椒をこれでもかといれたカクテルである。
うむ、甘いし、それは子供向きじゃないのとおじさんは躊躇したが、タメすことにした。
いい。
甘いが黒胡椒のキック力で脂も甘辛いタレも、すっと切ってくれる。
だから、またもう一枚、もう一皿となってしまう、危険な飲み物なのである。
ちなみにサーロインの脂も切る。
タンの脂も切る。
しかもタンは、トニックウォーターの甘味と胡椒の刺激が調味となって、タンを持ち上げる。
これを考えた人は「やった!」と叫んだに違いない。
ジントニは「ジンと肉」とも呼ぶ。「人(ジン)と肉」でもある。
しかも使うは、ビーフィーター。
屈強なことで知られた、ロンドン塔の衛兵ヨーマン・ウォーダーで、給金の一部に当時は高価だった牛肉が支給されたことから(ビーフイーター、肉食い)と呼ばれた人たちにちなんだジンである。
出来すぎである。
もしかするとビーフィーターは、こうして肉に合わせる宿命だったのかもしれない。
実に憎い。にくたらしい。