そびえ立っている

食べ歩き ,

君はアンナプルナかマッターホルンか。

推定標高18センチ、そびえ立っている。

思わず、どうしようもなく、山頂にかじりつきたくなった。
それとも北壁から行くか。南壁から行くか。
北壁には胡椒、西壁にはソースを少し。東壁には辛子をつけて、なにもつかけない南壁を中心にする。
ああ、一人で抱え、全部平らげたい。
いったいどんな気分になるのだろう。
我慢できない。
なにしろ「そこに山がある」のである。
「いっぱい作りましたから、おかわりもありますよ」。さらに船生さんから畳みかけられ、心が千路に乱れる。
これから数多くの、素晴らしい料理が出ることは知っている。
このポテサラが、今宵集った10人の量だということも知っている。
でも1人で全部食べたい。
頂上を極めたい。