東京とんかつ会議 第45回 浅草「すぎ田」の「とんかつロース」2100円

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議 第45回
浅草「すぎ田」の「とんかつロース」2100円 ご飯300円 豚汁200円
<肉3、衣3、油3、キャベツ3、ソース3、御飯3、新香3、味噌汁2、特記1【練り辛子】 計24点

なんて艶のある姿だろう。磨き抜かれた白木のカウンターに、とんかつの白皿が置かれる。箸をつけずにしばし眺めていたいほど、皿から色気が立ちる。
細い幅で均等に切られたロースカツは、細かい衣をぴったりと着込み、切り口からは肉汁が輝く肉が見えている。
細く切られたキャベツは、空気を含んでふわりと盛られ、皿の端には一匙の辛子が盛られている。脇には、光輝き、粒が立ったご飯が控え、味噌汁が香ばしさをくゆらせている。奥には、キュウリと白菜、野沢菜のお新香。
これぞ日本の正しき定食である。日本が誇るべき、美しき精神である。一つ一つが丁寧に、誠意をもって作られ、余分な見栄がない。レモンもパセリも、余計な飾りのない姿に、とんかつへの敬意と職人としての矜持が染みている。
さあ、いつまでも眺めてはいけない。すぐさま食べよう。衣に歯が当たるとサクサクと軽快に衣は弾け、きめ細かい肉に、ミシッと音を立てるかのように歯が入っていく。ゆっくりと甘い肉の汁が染みだして、脂がするりと溶けていく。前回は衣に多少ばらつきがあり、2としたが、今回は衣は均一で、ラードのコクをまとった衣と肉を食べる、とんかつならではの幸福を噛みしめた。
他店より細い幅に切られるが、ロースもヒレも、肉の厚みや質から考え、口に入れた時に最も美味しくなるように精妙に計算された切り方なのである。そのためひと切れひと切れが完成された料理となって満足し、させる。次のもうひと切れへ箸を伸ばさせる。この切り方は、無駄がなく、押しつけがなく、さらりとして、江戸の粋を感じさせるとんかつの姿でもある。
ご飯も香り高く、なんともおいしい。東京では、「すぎ田」、「ぽん多本家」、「いまかつ」がご飯のおいしさでは群を抜いている。豚汁は味噌の香り高く、根菜がゴロゴロ入って嬉しいが、とんかつを食べ進むにはやや濃く、2とした。
甘くみずみずしいキャベツ、必要最小限にして仕事が行き届いたお新香も素晴らしい。ソースは独自に調合した甘口、や辛口に加えてリーペリンが置かれている。ソースや塩をかけずともおいしいが、肉の部分やキャベツには、辛口かリーペリンをかけ、脂には辛子と甘口が相性がいいように思う。添えた辛子は錬りたてで、ヒリリと辛く、本来の辛しの役目を果たし、肉を盛り立てる。