パイを割れると、肉料理のエスプリが飛び出した。
五本木「ボンシュマン」を勝手に救済。
花澤さんが店を出されて以来、久しぶり。
誠実でいて、フランス料理へのこの上ない愛が伝わってくる料理は健在。
前菜の「大目鮭のマリネ」は、うっとりする鮭の脂とレモンムースバジルのソースが調和する。ガルニの新玉葱の芯の甘みと麦の食感も、ぴたりと着地している。
続いて前菜、スペシャリテの「ブーダンブラン」。
鶏肉と豚足のバランスよく、コラーゲンの甘みと練り肉の深みが舌の上で崩れ、思わず顔が緩む。
主菜は、これもスペシャリテ「千代玄豚のトルトゥ、青ピーマンのソース」。
熱々のパイを割ると、肉の甘い香りが立ち上り、ほおばれば、豚ひき肉、フォアグラ、鶏レバーの競演が、肉食い心を掻き立てる。
そして、青く香り、内に秘めた甘味を出し切った青ピーマンの優しさが、そっと支える。
焼き切って、生地のうま味が出たパイも見事。
こうしたフランス料理における肉料理のエスプリに出会うと、なんだか無性にうれしくなる。
リエット、川俣軍鶏、ブランマンジェという師匠へのオマージュも、不変。
そこもまた、花澤さんの誠実なのだ。