高校二年の時に、初めて銀座でデートをした。
銀座四丁目の交差点の、地下鉄の出口で待ち合わせると、律儀な彼女はもう来て待っていた。
相手は、同じスポーツをしていた女子高の選手だから、いつもは運動着しか見てない。
緑色のスカートから出た筋肉系の足を、恥ずかしそうにしながら佇む姿がいじらしかった。
いつも素顔だけど、薄く化粧もしている。
きっとなれていないのだろう。
妙に頬が赤かったことも覚えている。
ツイードのジャケットに赤いベスト、フレーアーのパンツという服の僕は、「じゃあご飯食べよか」と言って、そのまま「イタリー亭」へ向かった。
緊張していた二人は、四丁目から一丁目まで、あまり喋らなかったように思う。
地下への階段を降りると、薄暗い店内の中で、赤と白のギンガムチェックのクロスが温かく出迎えてくれる。
客が手書きしたキャンティの瓶と貼られた名刺が壁一面を埋め尽くし、大人の匂いが漂っていた。
ぎこちなさそうにしている彼女と一緒に食べたのが、「あさりと紫蘇のスパゲッテイ」である。
彼女が一口食べて、「おいしいっ」と、小さく呟いた。
「おいしいね」。僕も言葉を返して微笑んだ。
距離が縮まった。
「チーズをかけてもおいしいよ」というと、彼女は小さくうなずき、チーズをかけて食べ、僕を見て笑った。
今までろくに話もしていなかった二人の心が、少しだけ繋がった瞬間だった。
初めて銀座でデート
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