東京とんかつ会議殿堂入り審議　第116回　浅草「あき山」特上ロースカツ膳（2600円税別）
肉3、衣3、油3、キャベツ2、ソース2、御飯2、新香3、味噌汁3、特記なし21点（各項目3点満点、特記項目含め25点満点）

　気さくで話し好きの女将さんと誠実そうながご主人が切り盛りする、いかにも下町らしい人情味が溢れる、街のとんかつ屋である。
　ご主人は長らく築地で肉屋をやっていたが、とんかつ好きが高じて６０歳を過ぎてから妻の出身地である浅草で始められたのだという。
　前回訪れた時にはこう書いた。「衣をやや焦げ茶色に仕上げた、高温系の揚げ方だが、細かい衣がぴったりと肉に寄り添っている。水っぽくない、質のいい豚肉を使っていることと、揚げ切るタイミングの見極めが優れていることの証である。やや突っ込んだ揚げ具合で、運ばれた時が最高の状態になっているが、食べ進んで行くと、余熱で肉に火が入り、一切れ目の味わいの美しさが次第に薄れていくのが惜しい」。
　しかし、今回訪れたら、まず衣の色合いが薄くなった。火の通し精妙で、最後まできめ細かい豚肉の旨みを存分に味わうことができる。衣はカリリと香ばしく、一切れを歯で半分に千切っても、まったくはがれるそぶりすら見せない。聞けば、パン粉を変え、揚げ方も多少変えたのだという。
　ご主人は、現在６０代後半になられるが、肉に精通し、かつとんかつ好きであるだけに、常に今より良きとんかつを求めて、精進し続けているのであろう。
　お新香は胡瓜と大根と大根葉。青海苔とネギの味噌汁が珍しいが、とんかつの合いの手として、とてもいい。
　しらすおろしなどの小小鉢とマグロの赤身刺身がつく。これもまたたくさん食べてもらいたいというサービスだと思うが、とんかつを食べながら刺身を食べる間が難しい。僕は、先に小鉢を出してもらい、一杯やってからとんかつ定食をお迎えしたい。