人参の歯ごたえを探す

食べ歩き ,

シャクッシャクッ。
細い細い人参の歯ごたえを、探すように噛んでいく。
暗闇の中で光明の手がかりをつかむように、静かに口を動かしていく。
すると僕の口は、人参になった。
人参の甘い香りがたっぷりと湧き出でて、優しい人参になった。
低温でじっくりと人参の香りを移した油で、和えた人参は、人参以上に人参でありながら、土臭さから脱却して、優美な笑顔を見せるのである。
だから。食べていると、自分の汚さを見透かされているようで、少し恥ずかしくなったちゃうのだ。
「厲家菜」にて。