東京とんかつ会議96
人形町「そよいち」ポークカツ1650円お新香250円
【肉2油3衣3ソース2キャベツ3御飯2味噌汁2お新香2特記ポークソテーとマカロニサラダ1合計20点】各項目3点満点特記1点総計25点満点
人形町の交差点近くで長く愛されてきた「キラク」(現存)の味を引き継ぐ店である。店主だった故長谷川外吉さんが、注文と同時に、目の前で冷蔵顔から肉を取り出し、切り分け、塩を振り、適切な処置をして揚げ始める。その気取りのない手さばきと、清潔な素早さに見惚れていると、瞬く間に皿が運ばれた。店は一家総出で働かれており、当時ポークソテーを担当していた娘さんが、この店の店主である。
とんかつは、柔らかい方がいいとされるのが一般的だが、この店のカツは噛みしめる旨味がある。肉はやや甘みが劣るものの、キメが細かく質がよく、噛み締めれば腑抜けではない味がする。
そんな肉にぴったりと張り付いた細かい衣が香ばしい。ほんのりラードの香りがあって、油切れもすこぶるいい。ああ昔のとんかつとは、このようなものであったのではないかと思わせる、甘えのない、粋なとんかつである。
キャベツはみずみずしくふんわりと盛られ、きゅうりと大根のぬか漬けと沢庵のお新香、豚汁、ご飯も。十分な価値がある
特記にあげたポークソテーのソースは、酒とバターと醤油とニンニクによる特殊なもので、ご飯が恋しくなる逸品である。また自家製マヨネーズによるマカロニサラダの味はまろやかながら、下品の迫力を失っていない、これまたこの店のスペシャリテである。
親族で営まれる女性を中心としたサービスは気さくで暖かく、下町の心意気があって、気持ちがいい。また調理は、店主一人で大量の注文をこなすが、リズムがよく、待たすことがない点も素晴らしい。
河田氏