《肉交》という言葉がある。
というか、勝手に言っているんだけどね。
酒を交わすのと同義で、肉を食し、交わしながら、意思疎通を図るのだ。
そのためには交わすもの同士が、肉への愛と知識が深く、互いに敬意を払っていなくてはならぬ。
焼肉屋でも互いのペースや焼き具合を尊重し、手も口も出さない。
「脂がわかいね。「「酸が来たね」などと、たまに短い言葉を交わすだけで、意思足りる
それこそが肉ダンディズムである。
昨夜は代官山の「かねこ」で肉交をした。
黄身入り割り下がかかったローストビーフで舌を潤してから、焼肉。
相手よりうまく焼けていると思っても、決して口に出してはいけない。
それもまた肉交の掟である。
ふっくらと膨らんでいく厚切りタンを愛で、芯芯を片面だけバリッと焼き、サーロインはたくましく優しく焼いてやり、ランプはギリギリの深さで火を通す。
相手もまた、肉に凝視して揺るがない。
楽しや肉交。
肉交の友求む。
《肉交》という言葉がある
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