東京とんかつ会議殿堂入り審議 第119回 人形町「かつ好」
肉3、衣3、油2、キャベツ3、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁3、特記かろみかつ23点(各項目3点満点、特記項目含め25点満点)
今回は殿堂入り審査ということもあり、ヒレカツ150g かろみかつ 別格ロースカツ250g を食べ比べ、審議を執り行った。
「この肉はいいね」「揚げ方はどう思う?」「衣の粗さはどう判断しますか?」 通常の審議なら、こうした意見が活発に飛び交い、点数をつけていくことだろう。だが東京とんかつ会議の審査は、誰も一切言葉を発しない。
とんかつが運ばれる前は、世間話や先日行われた「とんかつ学術会議」の話などを、散々話し合っているのだが、目の前にとんかつが現れた瞬間に会話が止まる。見事に止まる。
三人のおじさんは、何も発せず、黙々ととんかつを食べるだけである。
「何かを発言してしまうと、他の評価に影響を与えてしまう」という、配慮から喋らないのである。
しかし今回は、黙って食べながらも、時折「おいしい」と小さな声を漏らしてしまう場面があった。こういうとんかつこそ、殿堂入りにふさわしい。
さて別格ロースカツは、脂身が肉の間に入り込んだ、一頭から少ししか取れないリブロースを使用しており、豚肉の甘い香りに満ちていた。衣は中粗の立ったパン粉だが、硬くなく、サクサクと軽やかに砕け散り、油切れもいい。
ただ欲を言えば、もう少し脂身に火が入った方が、より食感が良くなるだろうと思われる。揚げる温度や時間ではなく、今よりほんの少しだけ余熱時間を増やせばベストになるのではないか。
四角く整形して揚げる、独特のヒレカツも香りがあって、上等である。また薄くした肉を二枚揚げた、昔で言うところの「ペチャかつ」や「紙カツ」となる「かろみかつ」も、肉は薄いながらも十二分に香りと味が伝わってきて、素晴らしい。こちらも欲を言えば、やや衣が勝ちすぎている嫌いがあり、かろみかつだけ衣を細かくする事ができれば、よりバランスが良く、美味しい平成のペチャかつとなろう。
薬味やソースを多く揃える所も面白く、ソース、醤油、質の高いわさび、梅塩、和芥子(地辛子)とあり、かろみかつには大根おろしが添えられるので、おろしレモン醤油を作り、とんかつに乗せて食べるものも楽しい。
またわさび醤油や、レモン醤油、和芥子ソースなどで試しても面白く、とんかつ調味料の可能性を発見する事ができよう。
まあこんなこと試しながら、様々な思いを巡らせるのだが、あくまで黙って食べ、審議する。これは相当のとんかつ好きではできないことである。
こちらのご主人もおそらく同好の士であろう。それでなきゃ店名に「かつ好」なんてつけない。
写真は、別格ロースカツ250g ヒレカツ150g かろみかつの順です2017