<怒ってないよ>

食べ歩き ,

<怒ってないよ>
朝八時、成都の「頼湯圓」に出かけて、店に入ろうとすると、掃除をしていた若い女性店員数人に怒鳴られた。
「まだだよ。8時10分からだよ!」
後10分、そんなに声を張り上げなくてもいいじゃないかと思っていると、そうではないらしい。
キャッシャーの女性とフロアーの女性数人が、なにやら言い合っている。
喧嘩しているのか、大声で、叫び、叫び返している。
「まだ用意できないの!」
「うるさい!今やってるとこよ!見えないの!」
「まったく、のろいわね!」
「そんなにいうんだったら、あんたも手伝いなさいよ!」
「私はこっちの役目、あんた達の仕事とは関係ない!」
と言っているのか。 そこに笑顔はない。
しかしよく観察してみれば、空気は険悪ではなく、声が大きく険しいだけなのであった。
個人主張が一番の中国ゆえか、日本では怒号レベルの応酬である。
皆感じたことがあるかもしれないが、なぜこうも叫び合うのだろう。
やはり大声で席に通される。もたもたしていてはまた怒鳴られる。早く頼もう。
水餃子、牛肉麺、ワンタン、涼粉、饅頭、を次々に頼む。
食べていて感じるのは、塩気の淡さである。
ワンタンのスープも牛肉麺の辛いスープも、塩が舌に当たらない。
それは、単に塩気の少ないのが好みではなく、ちゃんといいスープをとっていますよという、証なのだという。
塩気でごまかしやがってといわれないためだという。
それぞれ約130円。麺に風味があり、ワンタンの肉アンがうまく、あんまんのアンコは、ごま油の風味がついてない粒あんだ。
皮はやや固いアルデンテ。
今朝も少し辛い朝食を終え、店を出ようとすると、キャッシャーの女性に怒鳴られた。
ドキッとして振り返ると、笑っている。
怒ってないよ。ありがとうございましたと言っただけさ