<国より恋を選んだ男>

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<国より恋を選んだ男>
成都「金牛賓館」。
周囲を歩くだけで2時間はかかる敷地に建てられた迎賓館は、国家の賓客を招くためのレストランと宿泊施設であるという。
例えお金があっても、政財界にコネがない限り入ることはママならぬ館には、アメリカ大統領を始め、数多くの要人が訪れた。
この飲食部門にて、若干24歳で料理長になったのが、趙陽さんである。
出身のシェフは、香港や海外に店を持ち活躍するトップシェフであり、この店で頂点に上り詰めた人物は、中国の宝でもある。
趙陽さんは、四川に留学に来ていた今の奥さんと恋をして、日本という地を選んだという。
それこそ国に反対され、趙陽さんからお金を払ってでもしない限り、出してはくれなかったという。
そんな宝が日本にいる。
今回「金牛賓館」で料理をいただいて、そのありがたみを痛感した。
四川料理のイメージを覆す、食材の味と香りが生き生きと迫る料理。
数千年に渡る四川の食文が極めて来た、人間の英知の結集が、舌に凄みとなって行き渡る。
恐らくすべての国の人たちを感動させる、自然で品格に富んだ料理が、ここにはあった。
これが至上の味というのだろうか。
改めて思う。
日本は、東京は、趙陽さんという、大変な財産を持っているのだということを。