松本「驪山」

<五目焼きそばの憂鬱と快楽>その2  

<五目焼きそばの憂鬱と快楽>その2
「ああこれなら、断然カタ焼きそばだな」。
一口食べて、笑いがこみ上げる。
そんな理想の「五目カタ焼きそば」に出会った。
カタ焼きそばか柔焼きそばか。
この命題に対し、前回僕は、柔焼きそばに軍配をあげたが、このカタ焼きそばは別格である。
品書きには、「五目焼きそば」としか書かれておらず、カタ焼きか柔麺の表示はない。
運ばれたのは、「五目カタ焼きそば」であった。
一瞬落胆したが、あんの下に見えし麺に、目を見張った。
極細平打ち麺なのである。
パスタならタリオリーニといったところで、それより薄く、キツネ色に揚げられている。
その食感が軽やかで、実にいい。
普通のカタ麺はボリッ、ガリッという感じだが、これはサクサクッと軽快に砕けて、それがとろりとしたアンとの対比をなして、箸が止まらなくなる。
さらに上にかけられたアンも、淡い味付けで、品がある。
白菜、玉ねぎ、しいたけ、筍、縁が赤い昔ながらのチャーシュー薄切り、エビ、イカ、錦糸卵という布陣もよく、それぞれの量が巧みに計算された調和がある。
さらに、しいたけ、筍、チャーシュー、錦糸卵の厚さが同寸という、見事な包丁仕事によって、この軽やかな薄麺とうまく馴染むのだな。
肉団子が一個参加しているのも心憎い。
これは伊府麺なのか。
どなたか知っている人がいたら教えてほしい。
 
松本「驪山」にて