黄色いムースと透明なジュレを匙に乗せ、そろりと口に運んだ。
ひんやりと唇に当ると、舌の上でふわりと溶けていく。
その瞬間、パプリカの青い香りと、昆布鰹に鮪を加えた出汁の香りが一つになった。。
出汁の、木や茸のようなほの甘い香りやまろやかな日向の香りが、黄パプリカの清々しい命の発露を、より高めている。
一方出汁のうま味は、パプリカの穏やかな甘みに勝つことなく寄り添い、人為を感じさせぬ自然が、静かに輝いている。
高橋さんは、緑のピーマンや赤パプリカで何回も試した結果、黄パプリカを選んだのだという。
ピーマンよりもピーマンらしい香りを放ち、赤ピーマンよりも甘く、黄パプリカは選ばれて、実に幸せそうであった。
角館「じん市」
閉店