食材ありき。

食べ歩き ,

食材が良ければ、料理はおいしくなる。
そんな当たり前のことを、いまさらながら気づかされた。
ラムローガンジョシュ。羊のカレーである。
今までの人生において、インド料理店でなんの疑問も抱かずに、数多く食べてきた。
だってそれ自体がおいしいんだもん。
しかしこの店で食べて、目を見開いた。
良き羊肉の臭みのない、甘い脂の味わいと香りがカレーに溶け込んでいる。
肉は柔らかく、ほろりと崩れて、滋味を舌の上に広げていく。
なんと優しいのだろう。暖かいのだろう。
普段インド料理屋で食べる、攻撃性が一切ない。
母の手で心を包まれたような、安寧がある。
野菜のビリヤニにかけ、ダルスープと混ぜ混ぜして食べても、互いに優しい同士が手を繋いだ、陽だまりがある。
羊は、石田めん羊牧場の羊だという。
翌日、偶然石田さんにお会いして、「羊が美味しいとあんなな磁歪になるなんて想像もつかなかったです」と、喜びの感想を伝えると
「彼は変態ですね」と、嬉しそうに微笑まれた。
札幌「みち草バザール」にて。