運ばれてきた瞬間に

食べ歩き ,

運ばれてきた瞬間に、バターとニンニクの香りが登って、顔が包まれる。
脂は舌の上で甘く溶け、緻密で凛々しい豚肉からは、肉汁が滴り落ちる。
醤油、バター、酒、肉汁、油、極少量の砂糖から出来たソースは、猛然とご飯をかき込ませ、ソースに浸った千切りキャベツは、キャベツだけご飯が食べられるほどおいしい。
そしてマカロニサラダは、どこまでも滑らかな夢見心地で、品よく淡い味に整えられて、肉やソースを支えている。
それは、小学校3年から半世紀以上、ずうっと父を支え、亡き父の味を守り続ける、女店主の敬意のように。
先代の店から30数年通う、愛してやまぬ、人形町「そよきち」のポークソテー。