「お前に、世の中で一番おいしいTortilla de patatasを食べさせてやる」。
そう言って連れて行かれた食堂で食べたトルティージャは、今までとは様子がまったく違って、素晴らしかったという。
酒井シェフが今年5月にスペイン南部を旅した時のことである。
「多分こう作るんだろうなあと思い作ってみました。普段トルティージャは出さないですが、今日は特別に」と言って目の前で作り始めた光景を見て、一同目を瞠った。
煙が出るまで熱したフライパンに油を入れ、捨て、油を入れる。
油返しをしたフライパンに卵液を入れると、そのまま菜箸もフォークも使わず、鍋を揺らし続けて20秒ほどで表面を固めてしまうのである。
切れば、とろりと卵液が流れ出て、心を溶かすほどふわふわである。
そして玉ねぎとジャガイモも溶けかかって、柔らかく固まった卵液と同化している。
食べればジャガイモの豊かな甘さがにじみ出て、卵の甘みが追いかける。
なんでこんなに芋が甘いのか。
聞けば、4時間ほどコンフィにしたのだという。
やられた。もう口いっぱいに頬張りながら、笑うしかないね。
代々木公園「アルドアック」にて
連れて行かれた食堂で食べたトルティージャ
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