誰を選ぶ? そう聞かれても僕にはできない。
栃木の霧降高原豚は、笑顔が健やかなのだろう。しなやかな肉質で、優しいうまみで、さらりと崩れていく。
二週間雪室で熟成させた、新潟の雪室熟成豚は、ふんわりと歯が包まれるように柔らかく、香りが立ち上ってから、しとしとと肉汁がにじみ出る。
岩手岩中豚は、きめ細かい肉を歯で断ち切る喜びがあって、うまみが濃く、揚げ油のラードのコクと共鳴しながら、脂が溶けていく。
そして鹿児島黒豚は、グッと歯に力が入る肉のたくましさがあって、噛みこめば、甘い香り爆発する。
噛むほどに滋味が湧き出て、幸福が体にみちていく。の
高田馬場 成蔵にて。東京とんかつ会議第一回学術会議。第2回