こんな美しい「ヒレ焼き」は見たことがない。
鰻の背びれ・腹びれを合わせ、少しだけ肝を挟んで巻いた串である。
きちっと等間隔できつく巻かれ、焦げ目が見当たらない。
その丁寧な仕事が、この店の誠実を表しているのだといえよう。
食べればふわりと舌に着地して、甘い脂と甘辛いタレがどうかして、溶けていく。
よくヒレ焼きで感じる筋っぽさは、微塵もない。
同様に、「肝焼き」も「うざく」も、「八幡巻」も美しかった。
そして「うな重」である。
焦げ目ひとつもなく艶やかなお姿。
硬めのご飯に均等にかけられた、鰻のタレ。
淡いうまみの肝吸い。
均一に揃えられた、胡瓜、大根、奈良漬。
しかも今日に鰻は、希少な鹿児島の横山さんのうなぎだった。
前回入ったのは三ヶ月前だという。
横山さんのうなぎはきれいである。
鹿児島の広々とした池で、のんびりゆったりと、良き食べ物だけを食べて、健やかに育ってきましたという、おおらかさに満ちている。
味に雑味がなく、脂のしつこさがなく、香りに乱暴がない。
妙な筋もなく、ふんわりと崩れると、甘い脂の香りが立ち上がって、顔をだらしなくさせる。
噛めば肉の中に、心をつかむうま味がある。
今日は欲張って、うな前にいろいろ食べてしまったが、今度はお新香でお調子を一本やってから食べるとしよう。