荒木町「御料理ほりうち」
数々の和食店で修行なされた、堀内さやかさんが2018年夏に開店させた店。カンターだけの小体な店を堀内さんと着物姿のサービスの女性の二人で切り盛られている。風情漂う荒木町に似つかわしい割烹である・
★先付けはおから。2度裏ごししたというおからは、実に滑らかで、口の中で儚く消えていく。甘さの味付けがほどよく、出すぎてはいないが、ほっこりとした暖かい気持ちを呼ぶおいしさがある。こうした素朴ながら手をかけた料理でお客さんと最初の会話を交わそうというのが堀内さん思いなのだろう。
★和え物 タコとホッキ貝 菊菜白ダツの和物。それそれのサイズ、量、味の整え方が決まっている。
★椀物 松茸とカマスのお椀。出汁の味わいが静謐ながら、どこか温かみを感じる。脂がぐっと乗ったカマスが松茸の香りを生かしている。
★お造り ハタと黒むつ。ハタには噛むほどに滲み出てくる、じっとりとした旨味があり、黒ムツは品のいい脂を抱きかかえて、素直にうまい。酒が進んで困るお造りである。
★おしのぎ 鯖寿司。お腹がいっぱいになりすぎないように、それでいて鯖寿司の美味しさを損ねないようにと考えられたスタイル。鯖でくるりと酢飯が巻かれている。梅酢の爽やかな旨味が効いて心憎い。
★鱧のバター焼き。立派なサイズの鱧をバターで焼いてある。レモンを再ぼりレモンバターをパンのように絡めて食べる。鱧のバターとの相性に笑うは必至。レモンの酸味のアクセントもいい。楽しい一皿である。
★鳥のもつ煮 堀内さんの故郷の郷土料理を洗練させた一皿。吟味した鮮度高い鶏の内蔵類を精妙な加熱で、しっとりと仕上げてなんともうまい。穏やかに仕上がった甘辛い味付けと、内蔵の甘みが響き合う。キンカンを潰して食べればさらにおいしく。
★小鍋 冬瓜とキノコの鍋。冬瓜を鶏の出汁で柔らかく炊き、山梨のキノコ類と松茸を合わせ、生姜と三つ葉を合わせた小鍋。鶏の出汁が染み込んで崩れゆく冬瓜のおいしさに顔が崩れる。
★ご飯。ご飯は白ご飯と味噌汁。きんぴらにひじき、イワシ煮、奈良漬、胡瓜のぬか漬けなどのご飯の友が小鉢に盛られるのが嬉しい。
13000円のコース。