熊の手と鯉に恋す。

食べ歩き ,

ピエドコションならぬ ピエドウルスである。
いや正確には手だから、パット・ド・ウルスか。
つまり、豚足のコロッケではなく,熊手のコロッケが出された。
ソースはペリグー、上に乗るは山椒のピクルスである。
きめ細かい衣にナイフを入れる。
中からは黒い肉の煮込みが現れた。
なにしろ熊の手だから,豚足同様コラーゲンがたっぷりとある。
しかし豚のように淡くはない。
しぶとく,猛々しい滋味があって、ペリグーと味わいを高めあい、鼻息を荒くするのであった。
 
鯉は、フランス料理に似合わない。
古典伝統料理で盛んに使われてはいたが、現代では、ましてや日本では使われない。
洗いや鯉こく、鯉の甘露煮といった日本の鯉料理を想起するからだろう。
エレガントを至上とするフランス料理とは、かけ離れた魚のイメージがある。
だがあえて、村山シェフは魚料理に、鯉を持ってきた。
元々山形では、内地の貴重なタンパク源として鯉養殖が盛んで、米沢藩指導で勧められてきた経緯があるという。
骨切りした鯉を、55度で火入れしてから急冷、直前にムニエルした。
3色のソースは、ニンニク(白)、ピぺラード(オレンジ)、チミチョリ(緑)である。
そこに土を感じさせるツルムラサキが下に敷かれる。
食べれば、しっとりと崩れゆく淡いピンク色の肉に、色気がある。
ほんのりと甘く、サーモンに似た味わいが、なぜか漂う。
日本の加熱料理は、濃い味わいで味を殺して生かす。
だが、村山シェフの鯉料理は、繊細さをもって優美を感じさせるのだった。
ふと高良シェフが作った鯉料理を思い出した。
今から9年前、佐賀の有田のイベントで出された料理である。
やはり骨切りされた鯉が、ふわりと崩れ、赤ワイン三本を注ぎ込んだというジュヌボワーヌソースと、高みに登っていった。
村山シェフ然り、食材に愛を注ぎ込んだ料理は、限りなくエレガントで、エロいのである。
山形「バ・マル」にて。
鯉料理は会え点づけるとしたら、カルプ ア ラ ムニエール, ソース トロワ クルールか