「いつも加熱している魚介たちが、薪火によって、こんなに変わるとは思いませんでした」。
そう木村シェフは言われた。
先日千葉いすみにある「五氣里」で、木村シェフと奈良「ヴィラコムニコ」の堀田シェフとのコラボディナーが行われた。
千葉の優れた食材を、堀田シェフが薪火で焼き、木村シェフがソースや付け合わせを作る。
薪火という、原初の加熱方法によって、千葉の魚が躍動した。
中でも驚きは伊勢海老である。
当日は特別に600g越えの伊勢海老を仕入れていただき、堀田シェフが殻から薪火で炙る。
えびの肉体をしがむ。
一瞬の抵抗があって、歯が伊勢海老の中に包まれていく。
体液が微塵も失われていない。
筋肉が、加熱によって縮んでいない。
グリっと音が立つかのように、えびの肉体を噛み切ると、凛々し雲、品のある甘みが滲み出す。
海底でイソメやイカ、小魚を獰猛に摂取する体には、滋養が満ちている。
伊勢海老のしぶとい生命力を突きつけられ、体が上気させられる味わいだった。
付け合わせは、フロマージュブランと胡瓜の糠漬けのソースの上に乗せられた、網干メロンのベニエだった。
網干メロンは、品のいいマクワウリといった味わいで、不思議なことに、ほんのりとマスカットの香りが漂う。
そんなしとやかさが、躍動する伊勢海老と対をなして、美しい調和を奏でるのであった。





