「準備中」
店前には、そう書かれた札がかかっていた。
予約していたので、気にすることなく、引き戸をガラリと開けた。
「いらしゃいませ」。
年配の女性二人が声をかける。
厨房には、70歳以上の痩せた老職人が立っていて、こちらをギラリと見た。
客は僕一人である。
電話で注文しておいた、肝焼きが運ばれる。
ビールで迎え受けながら、鰻を待つ。
ほどなくして上鰻重が運ばれた。
蓋を取ると、焦げ一つなき艶やかな蒲焼が姿を表す。
鰻はふうわりと舌の上で身を崩し、甘い脂がすうっと流れていった。
タレはやや醤油が勝った味わいで、ご飯も硬めである。
やや難を言えば、ご飯にかかるタレの量が少しだけ多い。
ご飯に山椒をかけ、蒲焼を食べて直ちにご飯をかきこんだ。
この鰻重には、こんな食べ方が一番合う。
味の濃い尻尾は最後に残し、他の部位よりよくよく噛んでから、ご飯を食べ、締めくくった。
焼津駅前ながら、ポツンと一軒店を構える「うな鐡」は、創業60数年になるという。





