僕は長い間、「カレーうどんは、女子の食べ物」と決めつけていた不埒な男です。
しかし30半ばで巣鴨「古奈屋」と出会い、簡単に持論を覆して食べ歩いた、軽率な男でもあります。
東京ではここ数年しのぎを削っているようで、フランス料理のシェフ監修のものや、白いソフトクリームのようなものなど、新種も現れていますが、ここはやはり「東京カレーうどん」という基本を紹介したいと、この店を選びました。
まず汁を飲めばわかりますが、かけつゆの味が効いています。
こっくりとした醤油味で味付けた出汁の中から、カレーの風味が静かに押し寄せる。
これが東京人の心を穏やかにさせる、東京の蕎麦屋のカレーうどんなのです。
さらに芹がいい。通は「根つきで」と頼む、芹の根も入っているところがいい。
背筋をシャンと伸ばすような芹の香りが、カレーの香りと相まって、口の中に広がるのです。
柔で細いうどんにシャキッとした芹の食感のアクセントが引き締める。
香り高い根を噛んだ時の、ザクッとした食感も心憎い。
だから飽くことなく、一心で食べ終えてしまうカレーうどんなのです。
食べ終えたら、蕎麦湯をもらい、蕎麦猪口に入れた蕎麦湯とカレーの汁を交互に飲む。
こうするとカレーうどんの余韻が益々膨らんで、最後の一滴まで飲んでしまう。
みなさん、是非試してください。