東京とんかつ会議8
代官山「ぽん太」とんかつ定食2800円
<肉3、衣3、油2、キャベツ2、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁3、特記なし計21点>
先々代が御徒町「ぽん多本家」で修行、渋谷に店を構え、平成四年に現在の地に移転。
今は平成16年から受け継いだ三代目が、とんかつを揚げる。修行先同様、薄茶色に揚げられた衣、「ビーフシチュー」や「はしらのフライ」、「ポークソテー」などの料理もあって、洋食屋の趣がある。
断面にしっとりと汗のような肉汁を浮かべた厚切の肉は、脂部分が丁寧に掃除されたロース肉。都内では希少な仕事だ。
その分、脂に含まれた甘い香りや、肉と脂を同時に噛んだときの柔らかい食感、脂を甘く感じる感覚などがないが、肉に歯がしっかりと入っていく「噛む喜び」と、肉だけの旨味がストレートに伝わる醍醐味がある。
肉汁に富む豚の味わいを邪魔せずに持ち上げる、きめの細かい衣もいい。ただ若干油が切れておらず、かなりの部分が湿ってしまっている点、一部衣が剥がれている点が残念で、油を2とした。
胡瓜、白菜、大根、茄子、ズッキーニのお新香は、いずれも丁寧な仕事が感じられて上等。なめこと豆腐の味噌汁もいい。ご飯も艶があり、甘く香り、申し分ない。ソースが甘みが勝ちすぎている点と、店じまい前だったせいか極細切キャベツが、少し乾燥ぎみだったので、2としたが、このおいしくバランスのとれた「とんかつ定食」を乱すものではない。小さいポテトフライも、芋の甘みに富み、カツの合間に食べるのに最適。
値段は高いが、古き良き仕事が生きた、もっと着目されるべき店である。