東京とんかつ会議113
東麻布「はぎ乃」ロースカツ定食980円(ランチ時)
<肉2、衣2、油3、キャベツ2、ソース2、御飯2、新香2、味噌汁1、特記なし 計16点>
昼時に出かけたが、30席弱の客席は満杯で、皆一心不乱にとんかつを楽しんでいた。
店は家族経営の様子で、息子さんだろうか? 揚げ手の男性もサービスの年配の女性たちも愛想がよく、「いらっしゃいませ」。「ありがとうございます」の声に張りがある。
ランチのカツは薄カツである。薄いだけでなく盤面が大きいので、昭和初期に人気のあった「紙カツ」の風情がある。高温で揚げられた。背脂を掃除された肉は、この薄さでは肉汁や脂の甘い香りはなく、どうしても肉より衣の風味が立つ。
サクッよりもカリカリとした衣はきめ細やかで肉とのバランスもよく、油の香りもいい。粉と卵を二度漬け、高温で揚げているのにも関わらず、肉と衣が剥がれていない。こうしたカツは、塩よりソースをかけて、御飯をかき込むのが良い。
ソースはとんかつソースとウスターソースが用意されるが、とんかつソースはかなり甘いので、ウスターを一切れずつにかけては芥子をつけて、噛みこむ方がおいしくいただける。紙カツなので、ビールの肴としてもいいだろう。
キャベツはやや乾燥気味で瑞々しさに欠けるが、この値段では致し方ないだろう。御飯は寸前に炊かれているようで、蒸れた匂いはないが、甘みと香りに少々かける。お漬け物は大根と胡瓜の浅漬け。味噌汁は「昆布だしでとっています」とメニューに書かれていたが、そのわりには妙なうま味が強い。
店の方の働きぶりの気持ちのよさがあるので、御飯や味噌汁や新香にその気持ちがさらに反映されたら、近隣のお客さん以外にも愛される店になるのではないだろうか。