東京とんかつ会議69回
銀座「とん㐂」「特製ロースかつ定食1500円」
【肉2油3衣3キャベツ3ソース2御飯2味噌汁2お新香2特記カツ丼 合計20点】各項目3点特記1点総計25点満点
ソニービルの裏通りを新橋方面に歩いていくと、「とんかつ」と、大きく書かれた看板が見えてくる。この看板を見るたびに、猛烈にかつ丼が食べたくなる。これから別の店に行こうという時でも、ふらりと店に入りたくなる。
「とん㐂」の「カツ丼」は、毎日百人近くが注文するという名物である。並の「カツ丼」も「特製カツ丼」もとんかつ屋ならではの、肉と衣を味わう喜びがあって胸弾む。それでいて肉が威張りすぎていない。とんかつ、ご飯、丼タレ、海苔、玉子がバランスよく収まって、味わいの座りがいい。
いつも「たまにはとんかつを食べるか」と、店に入るものの、結局は「カツ丼」を食べてしまう。しかし今回は会議である。議題である「特製ロースかつ定食」を頼みました。
肉はもう30数年前から使っているという平田牧場の三元豚。各地のブランド豚を使う現在のとんかつ屋の、草分け的存在である。肉はきめ細かく脂の溶け具合もいい。中粗の衣がラードのコクと香りをまとって、サクサクと崩れ香ばしく、肉にぴたりと密着している。油キレもよく、この店のとんかつの魅力は、衣にあり、衣と肉のどちらかが出るわけでもない一体感が、おいしさを生んでいる。
それゆえ塩なぞかけずとも食べ進める。とんかつソースはやや濃く、衣や肉の味を殺してしまうので、かけるなら卓上に置かれているユニオンのウースーターソースの方がお奨めである。
キャベツはふわりと空気を含んで甘い。大根がたっぷり入った味噌汁、やや柔らかめに炊かれたご飯、大根とキャベツのお新香も、とんかつの相手として申し分ない。
高級店が立ち並ぶ銀座で、庶民の空腹を、年中無休で満たしてきた愛すべき店である。