東京とんかつ会議55「とんかつ殿堂審議」
高田馬場「成蔵」 特ロースカツ定食2300円(昼)
<肉3、衣3、油3、キャベツ3、ソース3、御飯2、新香2、味噌汁3、特記1【かつ丼】 計23点>
「都内で、1500円の値段で食べられるとんかつとしては、最上級ではないか」。2012年10月、第7回東京とんかつ会議で「成蔵」を上げた時に、そう書いた。あれから数度出かけ、その想いは変わらない。しかし今回は、その上の「特ロースカツ定食」が議題である。
成蔵のとんかつの魅力は、その軽さだろう。じっくり時間をかけて揚げられる「特ロースカツ定食」は、鍋に入れた時にはまったく音がしない。130℃くらいから徐々に温度を上げて揚げるため、肉にストレスがかからない。余分な水分だけを排出し、大事な肉汁は閉じ込め揚げられる。また最後は高温なので、揚げ切りもいい。分厚い脂にもその下の筋にもしっかりと火が通っているので食感がいい。
中粗の生パン粉はサクサクッと軽やかな音を立て、歯は肉にめり込む。ほの甘い肉汁が滲み出て口に広がり、目を閉じる。笑う。これぞとんかつの醍醐味である。
脂は口どけよく、噛めばするっと溶けてしまう。こんな優しいとんかつは、なにもつけないか、塩だけがお奨めである。通常の霧降高原豚の時はそうした食べ方がいいと思うが、アグー豚の入荷がある時は、肉の味が強いのでソースを皿に垂らし、時々浸けながら食べてもおいしい。
都度手切りされるキャベツは、細く、甘く、みずみずしく、キャベツへの愛に満ちている。おかわりは100円。このキャベツに、剥がれた衣の破片を混ぜ、クルトン風にして食べても面白い。根菜の豚汁も申し分なく、沢庵、大根、キュウリ、キャベツという布陣のお新香もご飯も上等だが、さらに上向けば、最強の定食となろう。
かつ丼は今回初めて食べた。カリッと揚がった男気溢れるかつがのったかつ丼もいいが、成蔵のような優しいカツを使ったかつ丼もいい。肉の香りはしっかりとご飯を煽ってくるのに、優しい味わいゆえに、ご飯とよくなじみ、より一気呵成に掻き込みやすい。羽根が生えたような軽やかなかつ丼にバンザイ。