東京とんかつ会議130 東高円寺「とんき」ロースかつ定食1800円

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東京とんかつ会議130 東高円寺「とんき」ロースかつ定食1800円
[肉2油2衣3キャベツ2ソース2御飯3味噌汁3お新香2特記なし計19点] 

看板に「目黒とんき東高円寺支店」とある。前身は高円寺北口駅のビルの二階にあって、本店同様大勢の職人と女性のサービスの方でやられていた。そこで28年やられ、青梅街道に移理、ご夫婦二人でやられて17年になるそうである。ご主人は恐らく70を超えられているが、威勢がいい。
「はいっ! いらっしゃいませ」。「はいっ。ロースカツ定食ひとつ!」。「毎度よろしくどうぞ。ありがとうございましたぁ!」と、一人一人に、快活でハリのある声で応対されていて、実に小気味いい。
ロースカツは、まさに目黒本店ゆずりのやり方で、金串に刺した肉を、粉→卵液→粉→卵液→粉→卵液→パン粉と三度漬けてから、高温の油で揚げる。ゆえに衣はガチッと固めで、カリッ、ガリッと音が立つ竜田揚げのような衣となる。卵が多い分衣自体にほんのり甘味がある、正統派「とんき」の衣である。多くのとんかつ屋のサクサクと軽く香ばしい衣とはまったく異なるので、好みの別れるところだろう。肉に力今ひとつ弱いので、衣が勝ってしまっているが、このとんかつは衣を楽しむためにあるのだと思う。
だからいつもの塩ではなくソースである。一切れずつソースをかけて口に運ぶ。たまには辛子をかけて食べる。ソースをかけてもこの衣の存在感はしなることなく、歯の間で痛快な食感を保つ。高温でややあげすぎる為、衣がほとんど剥がれてしまっているが、これも本店同様のやり方で、衣が主役と思えばいい。
キャベツは基地たてではないが、甘く。豆の味噌を使った豚汁にも香りがあって、白ねぎの小口切りと青い部分を大ぶりに切って入れるなど、芸が細かく、はいっている肉もカスカスになっていない。またご飯は、粒がやや崩れているのがあるものの、蒸れなく、甘い香りがあって美味しかった。
お新香はキュウリのぬか漬けと沢庵と必要にして十分である。ソースは香りにやや乏しいものの、甘味がしつこくない。
ご主人の動きに無駄なく、見ているだけで心地良い。衣をつけるときの仕草、カツを切るときの仕草、揚げている間の仕事など、リズミカルでテンポ良く、長年丁寧にやられてきた職人だけが持ち得る、心が空くような仕事ぶりである。
厨房は一人でやられているのに、お茶の差し替えや、キャベツのおかわりの声かけるタイミングなど常に心が配られている上に、食事が終わると、楊枝入れのかぶせてあるコップをすっと取る。新しいオシボリを出すなど。とんかつの技術だけでなく、サービスの心も本店を受けついでいる。
この地に移って17年。365日休みなしで昼夜営業。殿堂入りへは果たさないが、愛すべき街のとんかつ屋である。