最初の一口は、少し昆布を感じた。
しかしあいなめを突き崩し、食べたらどうだろう。
あいなめの甘味とつゆが滑らかに抱き合い、海の豊饒を誇りだす。
滋味が爆発し、ずんと膨らみ、海の底の引きずり込まれる。
そしてあいなめが、ねろりと舌にからんでくる。
ああエロい。はぁ。
興奮がため息となって、口を突く。
その興奮をすっと落ち着かせる、椎茸の静かなうま味もいい。
あいなめとつゆが互いに高みに登る様を、そっと見守っている。
四季を愛し、自然と共生してきた、日本人としての深謝の心に富んだ料理である。それは、命のありようの本質に触れんと感じさせる、凄みの縁を見せてくれる。
「辻留」四月のお椀