昨日はちょいと飲んだ

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昨日はちょいと飲んだ、なんてえ翌日の昼は、「カレーそば」に決めている。 それも街のそば屋に限る。
老夫婦で切り盛るそば屋さんなんか、最高だな。
開けはなに入ると、老主人が客席で新聞を読んでいて、眼鏡越しに上目遣いで「いらっしゃいませ」なんて言う店がいいねえ。
カレーそばが運ばれてきたら、迷うことなく七味をかける。
最初は少しだけね。
甘辛い出汁が、痛んだ食道を撫で、カレーの匂いが、鈍っていた食欲を叩き起こす。
汗をかいて毒素を出そうってんなら、激辛担々麺やテグタン、インドやタイのカレーを食べればいい。
しかしカレーそばは、それらのように最初から飛ばさない。
いくら七味をかけようとも、口から火を吹くことはなく、半分くらい食べ進んだところで、じわっと汗が出始める。
この時間感覚がいい。
いきなり殴られるより、じわじわと四の字をかけられていく、そのいじり方が、昨夜の酒を追い出してくれる。
カレーそばはあんかけなので、そばにカレー餡がからみついて口元に登り、舌や口腔内の粘膜を包み込む。
いきなり喉に落ちないで、一旦口の中に滞在してから消えていくのんびり加減が、弱った体や脳には優しい。
ただ、そばに餡がからみすぎて三分の二ほど食べると、汁が少なくなってしまう。
その時はそば湯をもらい、多少水分を補填してから、終焉へと向かう。
「ごちそうさま」と言ってお金を払い、店を出て5分くらい経ったところで、汗は最高潮に達し、残った酒は、ようやく退散していく。
この瞬間がたまらない。