春の味は、生を育む喜びに満ちて、かくもせつなく、かくもたくましい。
アバッキオである。
奥野シェフは、乳飲み仔羊の香りに敬意を払い、バターとオリーブ油、香草類を使い、水分は使わずに、フライパンでじっとりと火を入れた。
丁寧に火を入れられたのだろう。見れば、仔羊肉の表面が、ふっくらと盛り上がって、早く食べてと、呟いている。肉を切る。口に運ぶ。
やんわりと歯を包む肉から、ほの甘い乳の香りを伴った肉の滋味がこぼれだす。
ふんっ。
いたいけな命をいただいたコーフンが、息となって鼻から漏れた。
脂は羊への道筋を感じさせながら、どこまでも優しく、弱々しいが、凛々しく成長するであろう予感を含んだ筋には、噛みしめる喜びがある。
ブリアンツァの春、すべての料理は
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