初めて「ひまわり食堂」のカウンターに座った。
「僕が旅に出る理由」、「一生に一度だけの旅」など、カウンターの上には、さまざまな旅の本ががあった。
聞けばシェフは、昔バックパッカーだったという。
料理が出る。
唐揚げした魚に、トマト色のソースがたっぷりとかけられている。
オコゼにナイフを入れれば、たくましい筋肉があって、海底の滋味が滴り落ちる。
そこへソースが香った。
発酵パプリカの丸く深いうまみが舌をとらえ、様々なスパイスの香りが流れてくる。
ロメスコソースとバターチキンマサラの合間に、バイマックルーやレモングラスが漂い、食欲を掻き立てる。
そんなソースだった。
イタリア料理店だが、自由奔放にに世界を飛んでいる。
その後に出された、ゴーヤのオムレツや水蛸の焼売、コリアンダーパンナコッタもそんな気配があった。
旅とは、自らの機を発動させることである。
田中シェフの心は、富山にいながらバックバックを背負い、世界中を旅しているのかもしれない。
富山「ひまわり食堂」にて。