新いくらには、命の目覚めが眠っている

食べ歩き ,

新いくらには、命の目覚めが眠っている。
色気を伴い、品をまとって、こそっと香る。
口に含むと、はかなくつぶれて液体となり、喉に流れ落ちる刹那、ふっと香りを広げるのだった。
「僕らは生きているよ」と、精の証を伝えくる。
だから塩加減に、気を緩めてはいけない。
多過ぎれば香らず、少ないと、余計な匂いが出てしまう。
智映が作った新いくらは、塩が精妙に決まって、はかなくも、命の艶たる香りを漂わせ、僕をコーフンさせるのだ。