やはり、愛情込めて飼育されている動物は、畜産家の性格に似てくるのだな、と思った。
ドイツで7年間シャルキュトリーを学んだ、ふくとめ牧場の福留さんもお父さんも、実直そうな、優しい親子である。
日本では珍しいサドルバックの豚しゃぶは、いい意味で自我が無い。
穏やかな滋味を舌に流しながら消えていく。
人間と同化しようとするような甘みで、さらりと溶けていく。
これが本当の自然だよと言わんばかりに。
あまりの素直な味わいに、空いたしばらく口が締まらなかった。
コッホシンケンもサラミ類だってそうだ。
舌の上で豚の甘い香りだけを残して、ふわりと無くなっていく。
「一番溶けのいい、おっぱいの脂を使っています」というレバーペーストは、空気と玉葱の甘みを含んで、淡雪のように消えてしまう。
ふわふわ。するん。
こんなレバーペーストは、初めてである。
そんな優しさも見せながら、肩ロースは、原始の豚に近いため、肉が赤い。
赤きたくましさで、肉を食らう喜びを噛み締めさせる。
すべての精肉、加工品から豚たちの生きていく声が聞こえる。
都会から遠く離れた地で、実直に朴訥に進化し続ける、豚たちの聖地である。
鹿児島県鹿屋市にて。
追伸
猪口、お前はエライ。