角館「じん市」

芍薬という奇跡。

食べ歩き , ポエム ,

水タコを、なんとか柔らかく食べてもらえないか。

角館「じん市」の高橋氏は、切り方を試行錯誤してたどりつき、奥さんが「芍薬造り」と名付けた。

昆布出汁で湯通しし、昆布出汁とポン酢をあわせて、少しだけかける。

食べた瞬間、鳥肌が立った。

柔らかさの中に命のつたなさがあって、無常を感じさせる。

ああ。

こんな優美な水タコには出会ったことがない。

はかなく美しい、タコの命の花である。

その花は、懐石料理の心得の一つ、「思いやり」が咲かせた、奇跡である。