恵比寿「ルコック」。
ガスパチョは、熟れた果実のように濃密で、はちきれんばかりのうまさが胸を突く。
一口すくい、舌に広がるたびに、やがて来る初夏への恋慕が膨らんでいく。
精妙に計算された濃度、野菜の甘みと酸味の中で、甘く溶けるモッツァレッラ。
おいしいねえと、何度も同席者と目を交わす。
萩の甘鯛は、ウロコがサクサクと崩れ、身はしっとりと熱々のジュースを含んで、ほわりと崩れていく。
その瞬間の幸せは、何物にも代えがたい。
セロリソースの香りは、そっと魚を助け持ち上げる。
巧みな技と繊細なエスプリに裏打ちされた誠実な料理。
決して派手ではないが、口に含んだ瞬間、心を動かし、目を見開く感動がある。
しみじみとうまく、季節に感謝する料理。
昨日昼は我々二人と一人客だけ。要救済。
この店が空いているようじゃ、東京のフレンチ好きなお客さんのレベルは、まだまだだと思う。
恵比寿「ルコック」
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