スパゲッティといえば、ナポリタンかミートソースを指していた昭和四十五年代、粋な浅草に開店したのがカプチノである。
なじみの薄い料理を下町の人々に親しんでもらえるよう工夫を重ねたのだろう。
その苦心のあとが他に例を見ない料理として定着しているのだ。
冷製ほうれん草スパゲッティもその一つ。
ほうれん草を打ち込んだ生パスタを、茹でて冷やし、ガーリックオイルで和え、ケシの実とアーモンドを散らしたパスタである。
オイルとともに忍び込ませたというさまざまなエキスが、ほうれん草色のコシの強いパスタにからみ、食べ進むにつれうまみが膨らんでいく。
そんな魔力と下町の心意気をからめた、不思議なスパゲッティなのである。