みなさん、冷やし中華を食べていますか?
僕はこの時期になると、まずはフツーの街の中華料理屋に行って、フツーの冷やし中華を食べ、高まる冷やし中華熱望を、一旦鎮静化します。
豪華食材に頼らない庶民系冷やし中華には、温かさと切なさがあって、心が落ち着くのです。
そして次に、「揚子江」に向かいます。
なにしろ昭和8年に考案したという、「冷やし中華発祥の地」でありますから、冷やし中華ファンにとっては、お伊勢参りのような神聖な行事なのです。
ざるそばから母国中国にはない麺料理を発想し、富士山を模して盛り、15品の具を、麺と馴染みがいい細長さで、放射状に飾り、二百回は試作したという甘酢ダレで整える。
すっきりとしているのに、クセになるコクがあるタレや、様々な具が麺と抱き合い生まれる喜びなど、すべてが涼を呼び、厳しい暑さをひと時忘れさせてくれます。
でもなにより、この店から全国に巣立ち、「冷やし中華」という日本独自の食文化が生まれたのかと思いながら食べると、涙が滲んでくるのです.
みなさん、ぜひ、一緒に食べませんか。
そして一緒に泣きませんか。