テラスに出ると、冬の海が打ち寄せていた。
ゴォー。ザザザァザァ。
ゴォー。ザザザァザァ。
数百頭に及ぶ白馬のタテガミが、荒ぶれながら、岸辺に向かってくる。
空は、薄墨色の雲の合間から、水色の顔をのぞかせ、今登ったばかりの太陽は、雲の後ろで鈍い光を滲ませる。
ゴォー。ザザザァザァ。
たゆまない光景は、人間を小さくする。
自らの存在のはかなさが、顕になる。
その時、ぽつりと胸に、気持ちが灯る。
海へ、雲へ、空へ、太陽へ、風へ、見えぬ動物たちへ、彼方の地平線へ。
おそれ、敬いながらも、生かされている感謝が、灯る。