思うに最近のとんかつは、衣が威張りすぎていると思う。
粗い衣が立っていて、「サクサクとした食感を楽しんでください」と、余計なお世話を焼いてくる。
そりゃあ、衣の食感を楽しむのはとんかつの魅力だよ。
でも、主役は肉なのだ。
肉の風味を生かす衣であってほしい。
粗い衣のとんかつ、あれは偽善だ。
衣の存在感で逃げている、偽善行為である。
荻窪、たつみ亭はいい。
とんかつ定食1400円。
どうです。
端正な姿じゃありませんか。
夜の上とんかつ定食2800円。
佇まいが静か。
どうだという圧倒感を滲ませながら、耽美。
肉と衣はぴたりと寄り添い、一部の隙もない。
衣に歯を立てれば、かりりと音が立ち、肉に歯がゆっくりめり込んでいく。
途端に豚の甘いジュースが溢れ、あわてて口を閉じ、笑顔が訪れる。
やや一呼吸合って、出る言葉は
「ああ、おいいしいなあ」。
対面の同席者が、幸せそうにうなづく。
とんかつはこうでなくちゃ。