伏木先生と話しましたんや

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「伏木先生と話しましたんや。料理は化学では語れないものがあると」。
「そしたら先生も、そうだと言っていました」。
「ボタン押して、気がついたら料理ができる。それでは一生食材と会話ができない。これからはアナログに戻らなくてはいけない」。
「幸いにして、大原では若い人が農業を継いでくれている。30代の人が何人もいるようになった。でもどうやっても80代のおばあちゃんが作っとる大根にはかなわないんですわ」。
「別に変わったことをやっているわけではない。心の違いでしょう」。


食事が終わってから喫茶店で、久々に中東さんとお話しさせていただいた。
食の未来を、日本の明日を憂いながら、様々な活動を続けてらっしゃる話を聞いた。
僕が初めて「なかひがし」を訪れたのは、確か97年だから、今から10年ほど前になる。
その時、ご飯の前に出された「大根の炊いたん」を一口食べて、絶句した。
大根と大根の葉を、出汁も調味料も使わず、水だけで炊いた料理である。
それなのにどこまでも甘い。
優しく丸い甘みに満ちていて、体中に幸福感が満ちていく。


「大原で長く農業をやっとるおじいちゃんとおばあちゃんが、出荷用ではなく孫のために作っている聖護院です」と、その時中東さんは教えてくれた。
その話を思い出して、話した。すると
「人間は本来、力ある野菜の味を、そういうものを美味しいと思うようにできてるのです」。