人生最後の生ハムを食べた。
去年、スペインのバルセロナ近郊で野生猪からアフリカ豚熱(ASF)が発見され(飼育豚からは未発見)、11/28にスペインからの豚肉および加工品は、全面輸入禁止となった。
つまりスペイン産の生ハムは、もうしばらく食べることができない。
もうしばらくと書いたが、猪の駆除、菌を持っていない親豚からの出産、子豚の成長、生ハム製造、熟成を考えると、後16年は無理だという。
すると僕は87歳だから、もう一度食べられる可能性は低い(2024年日本人男性の平均寿命は81.09歳)。
目の前には、人生最後の有機純血統ハモンイベリコベジョータが置かれていた。
この真の生ハムに惚れた山田悠平氏が、現地で5年修行し、その後日本に輸入しようと、5年間交渉してようやく許諾を得たハムである。
なにしろベジョータの純血は2%しかない。
切ってからしばらく置いたほうが味が出る。裏モモの「マサ」。
膝側の「パピージャ」、粉ふくようにチロシン結晶が見られる、味の良し悪しがわかる部位だとお尻 の「プンタ」。
ブニブニとした食感から旨みが滲み出る、ふくらはぎの「パレテ」。
様々な部位を楽しんだ。
どれも、一口目から酸味も苦味もないわも純粋な深い旨味と脂の甘みが抱き合い、噛むほどに膨らんでいく。
これに比べると、他の生ハムは、まだ人生の辛苦を舐めていない、子供である。
長くたなびく余韻を、目をつぶって噛み締める。
もはやワインも熟成した日本酒も、力が足りない。
かろうじて合うのは、一部シェリーと、色々なモルトをブレンドした、AOであった。
最後の一枚は、よくよく噛んで、小さな小さな断片になるまで味わい、やがて生ハムは、胃の腑に消えていった。
ありがとう。
僕はそう言葉をかけて、今生の別れを告げた。









