自由が丘「siamo noi」

ラザニアという思いやり。

食べ歩き ,

これを食べると、他の「ラザニア」はみんな乱暴である。
ラザニアとは、ラグーを食べるものでも、ベシャメルやチーズを食べるものでない。
パスタを食べるものだという、真実を知った。
食べた瞬間に、体が軽くなる。
薄い薄いパスタと一緒に、宙に舞い上がっていく。
10層にも重ねたというパスタは、存在感はありながら、羽衣のように薄く、口溶けがいい。
その美しいはかなさを邪魔しないよう、ラグーももチーズも、量をぎりぎりに計算されていた。
しかもラグー、ベシャメルや自家製のゴルゴンゾーラやモッツァレッラも、標高700mで放牧される、「薫る野牧場」のジャージー牛である。
おいしいが、「うまいっ!」と、叫ばせる強さはない。
優しい慈愛が、じわじわと舌に染み込んでいく。
そんなおいしさである。
ふと、自由気ままに育った牛たちの優しい目が浮かんできた。
大地のたくましさと心を丸く撫でる思いやりが、味にある。
それが30分かけて、丹念に生地を作り上げた、吉井くんの思いと同期する。
「生きてきてよかった」。
食べ終えると牛は、そう言って、牧場の空へと帰っていった。

自由が丘「siamo noi」にて