炊き合わせは、メバルと芹だった。
身がよじれ、せり上がらんばかりに膨らんだメバルは、鮮度の良さを体現している。
目の前に運ばれた瞬間、覚えのある香りが顔を包んだ。
バイマックルー、こぶみかんの香りである。
「これはなんの香りですか?」
「みかんの葉です」と、吉井さんが応える。
そのさりげない返答がいい。
出汁と微かな塩だけで炊かれたメバルは、品のある甘みを膨らます。
メバルらしい磯香が、こぶみかんの香りによって和らぎ、品が研ぎ澄まされる。
そこには、甘辛く煮たメバルとは異なる、エレガントがあった。
せりの溌剌とした香りが、そのエレガントを引き立てる。
どこにもありそうな料理で、簡単にできそうに思える料理ながら、ここでしか生まれない、唯一無二の料理である。