フランス料理に物申す という本が売れている。
痛快な本である。
田代シェフ、北島シェフ、谷シェフという三人の親父シェフが、食の安全から客やスタッフのこと、フランス料理の未来などを、辛らつに語り合った本だ。
「素材に対する心遣いがあって、初めていろいろ見えてくる」。
「うまさは甘さではない」。
「フランスを感じるとは、素材に愛情を注ぐことかな」。
「鍋に感謝する気持ちで磨いてから帰る」。
「シェフの人となりをぶつけるのが個人の店」。
「一番嫌いなのは、店を値踏みしようとする人」。
「料理を出す前に、その料理を一回飲み込んで噛み砕く」。
「料理は誤差の集積」
といった、言葉がポンポンと語られる。
それぞれの言葉を音楽や絵画という言葉に代えても、学問などに変えても当てはまる。
個人の店で一筋に孤軍奮闘してきた親父だけが持つ、矜持をたずさえた真理の言葉だ。
読んでいるうちに無性に食べに行きたくなって、「ラブランシュ」に予約を入れた。