もう30年以上の付き合いだが、いまだにゴールデン街に向かうときは、緊張する。
若い頃、色川武大や田中小実昌、大島渚や山下洋輔、南伸坊や三上寛を見かけた事もあって、50を過ぎても、「若造にはまだ早い」。
「芸と知を磨いてから来い」と言われている気がする。
そんな方々の行きつけのバーにも足を向けたこともあるが、大抵は、今でいうところのG2通りにある、「ハングリーハンフリー」で、ミートボールカレーにパンを浸しながら、ズブロッカを何本も開けて、酩酊していた。
左まぶたに残る傷は、その店の階段から転げ落ちた時の記念である。
ここゴールデン街だけが、無茶な食べ方と飲み方をしても、許された(それよりひどい人が、たくさんいたからね)。
今は、全体の雰囲気こそ変わらぬものの、客も店もすっかり変わった。
若い経営者が増え、ガイド掲載の影響で、外国人客が多い。
もう昔の文化はないさと、嘆く人もいるが、そうだろうか?
売春宿の立ち並ぶ青線から飲み屋街に変革した昭和40年頃、店を始めた方々も客も、若かったのである。
ゴールデン街は今、若い人の手で再生しているのではないだろうか。
「ビストロパボ」のジョー君もカッコイイ。
注文後、塊肉を薄切りし、叩いて作った「羊肉団子」。
羊肉の香りにチーズの香りが混ざり、ちょっとエッチでワインがすすむ。
そしてカルパッチョも野菜料理も、ステーキもすべて500円。
混むわけがわかる。
先日は、北欧の珍しい酒を痛飲する客が隣の外国人に、つたない英語で酒を奨めて、盛り上がっていた
聞けばその酒は、持込みだとか。うん。やはりゴールデン街はいいなあ。